「この1本を吸わなければいいのに…」と思いつつ、ついたばこに手が伸びてしまうのは、ニコチン依存症に陥っているかもしれません。
喫煙によって、がんや心疾患、脳卒中、呼吸器疾患などの身体的なリスクは周知されていますが、最も怖いのは「やめたくてもやめられない」ニコチン依存症の悪循環です。
ニコチン依存症は治らないの?と不安な方も多いですが、禁煙補助薬や適切な禁煙治療によって抜け出せるチャンスはあります。
この記事では、ニコチン依存症の実態やリスク、禁煙治療の方法などを詳しくご紹介します。
自分はニコチン依存症なの?と気になっている方や、禁煙したいと思っている方は、ぜひ参考にしてください。
ニコチン依存症とは?
ニコチン依存症とは「血中のニコチン濃度がある一定以下になると不快感を覚え、喫煙を繰り返してしまう疾患」です。
引用:厚生労働省 e-ヘルスネット ニコチン依存症
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/tobacco/yt-052.html
たばこの値上がりや健康面を考えて禁煙しようと思っても、ニコチン依存症による喫煙欲求や不快感が強く、禁煙に失敗してしまう方は少なくありません。
では禁煙を阻む、ニコチン依存症について詳しくみていきましょう。
ニコチン依存症のサイクル
禁煙したいのに、なぜたばこを吸わずにいられないのでしょうか?
喫煙のハードルとなるニコチン依存症のサイクルをみてみましょう。
- たばこを吸うと、ニコチンが肺から吸収され、脳に到達
- 脳にあるニコチン受容体にニコチンが結合
- 快楽物質のドーパミンを放出し、脳に刺激と快感を与える
- たばこを吸わないと血中のニコチン濃度が一定以下になる
- ニコチンが切れることで不快感やイライラ、喫煙欲求がでる(離脱症状)
- 再びたばこを吸ってしまう
- たばこを吸うとリラックス、満足感があり、やめられない(ニコチン依存症)
断続的に喫煙を繰り返すニコチン依存症のサイクルは、身体的依存です。
一方、たばこを吸うことが日常的な習慣になっている方は、心理的依存に陥っています。
ニコチンの身体的依存
喫煙でリラックスやストレスが発散できると錯覚し、たばこを吸わず血中のニコチン濃度が一定以下になると、不快感や物足りなさ、イライラなど離脱症状が起こる。
離脱症状を抑えるために、体が自然にニコチンを求めてしまう。
ニコチンの心理的依存
たばこを吸うことがクセになっている方や習慣になっていること。
仕事の合間に一服、たばこ休憩など、たばこを吸うことがメリットだという錯覚した記憶から心理的に依存してしまう。
ニコチン依存症は依存性の強い精神疾患のひとつ
道端の自動販売機やコンビニ、スーパーなどどこでも購入できるたばこですが、ニコチンの依存性の強さはコカインやヘロインに次いで高く、アルコールや覚せい剤を上回ると報告されています。
ニコチン依存症は、強い依存性がある薬物であると理解することが大切です。
参照:厚生労働省 テキスト教材
https://www.mhlw.go.jp/topics/tobacco/kin-en-sien/manual/01-3-1.html
参照:一般社団法人 日本禁煙学会
http://www.jstc.or.jp/uploads/uploads/files/information/2018625t.pdf
このように高い依存性をもつニコチンは、WHOの国際疾病分類(ICD)にタバコ使用(喫煙)による精神及び行動の障害として定義されています。
禁煙できないのは意思が弱いのだけではなく、精神疾患の一種に罹っているということなのです。
ニコチン依存症の割合
喫煙者の70%がニコチン依存症に陥っているとされ、たばこがないと生活できない、ニコチン切れで集中できないといった誤った認識のため、たばこを吸い続けています。
ニコチンを一度体に取り込んでしまうと、繰り返し吸いたくなるため、禁煙しようと思っても失敗するのです。
ニコチン依存症から脱却するには、たばこがもたらすリスクを理解し、自分がニコチン依存症なのかどうか知ることが大切です。
ニコチン依存症のリスク!たばこは万病のもと
たばこに含まれる多くの化学物質や発がん性物質によってDNAの損傷や細胞の変化が起こり、肺がんをはじめとする様々ながんや脳出血、呼吸器疾患、心疾患、生活習慣病のリスクを高めます。
非喫煙者と比較した場合の喫煙者の死亡率は以下のとおりです。
- 咽頭がん32.5倍
- 肺がん4.5倍
- 口腔・咽頭がん3.0倍
- 食道がん2.2倍
たばこを吸う年齢が若いほど、たばこを吸っている期間が長いほどニコチン依存症や疾患のリスクが高い傾向です。
また、ニコチン依存症のリスクは、たばこ(主流煙)を吸っている本人だけではなく、受動喫煙によって副流煙を吸い込む家族や周囲の方にも影響を与えます。
ニコチン依存症をチェックしよう
長年たばこを吸っている方や禁煙に何度も失敗している方は、ニコチン依存症の可能性があります。
禁煙治療での保険診療では、ニコチン依存症スクリーニングテスト「TDS(Tobacco Dependence Screener)」が用いられ、ニコチン依存症の程度を評価することができます。
たばこに関する質問に「はい(1点)・いいえ(0点)」で答え、5点以上でニコチン依存症管理料を算定できます。
参照:日本循環器学会・日本肺癌学会・日本癌学会・日本呼吸器学会
禁煙治療のための標準手順書 第 8.1 版
ニコチン依存症のスクリーニングテスト「TDS」についてP10
https://www.haigan.gr.jp/uploads/files/%E7%A6%81%E7%85%99%E6%B2%BB%E7%99%82%E3%81%AE%E3%81%9F%E3%82%81%E3%81%AE%E6%A8%99%E6%BA%96%E6%89%8B%E9%A0%86%E6%9B%B8%E7%AC%AC%EF%BC%98.1%E7%89%8820210916.pdf
参照:厚生労働省 e-ヘルスネット
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/tobacco/yt-048.html
ニコチン依存症の治し方は?
ニコチン依存症を治す最良の方法は「禁煙」です。
しかし、禁煙をするとニコチンの離脱症状に苦しみ失敗してしまう方も多いため、禁煙補助薬を用いて禁煙治療が行われます。
ニコチン依存症の禁煙補助薬は、ニコチンパッチ(ニコチネルTTS)やニコチンガム、チャンピックス(バレニクリン)の3種類です。
ニコチネンパッチ(ニコチネルTTSパッチ)
ニコチンが含まれたパッチを体に貼り、一定量ずつ体内に吸収させる薬剤で、ニコチン代替療法といわれています。
ニコチン濃度が一定に保たれるため、イライラやストレス、喫煙欲求などの離脱症状を抑える働きがあります。
ニコチネルTTSは、ニコチンの含有量によってニコチネルTTS10・ニコチネルTTS 20・ニコチネルTTS 30とあり、含有量が高いものは医療機関での処方のみです。
ニコチンの含有量が低いもの(ニコチネルパッチ20・ニコチネルパッチ10)は、第1類医薬品で一般の薬局やドラッグストアで購入できます。
ニコチンガム
たばこが吸いたくなったときに行う、ニコチン代替療法のひとつです。
ニコチンが含まれたガムを噛んで口の粘膜からニコチンを補給し、徐々にガムの数を減らし、禁煙を目指します。
ニコチンガムは一般の薬局やドラッグストアで販売されている第2類医薬品で、禁煙外来での保険適用になっていません。
チャンピックス(バレニクリン)
ニコチンを含まない飲み薬で、禁煙をスタートする1週間前から12週間服用します。
ニコチンの結合が阻害される働きをもつため、喫煙欲求や満足感が軽減され、禁煙による離脱症状を和らげる効果があります。
現在チャンピックスは、出荷停止・自主回収されているため、禁煙外来の休止や新規患者の受け入れを停止している医療機関も多く、禁煙外来を継続している医療機関では、チャンピックスの代わりにニコチネルTTSを処方しているところもあります。
薬局やドラッグストアで手軽に購入できる禁煙補助薬もありますが、ニコチンの依存性の強さは自力で抜け出せない可能性があります。
「絶対禁煙したい」
「一人で禁煙するのは不安…」
という方は、禁煙外来やオンライン診療での禁煙治療を検討してみましょう。
ニコチン依存症の禁煙治療を受けるには?
ニコチン依存症の治療として禁煙治療を受ける場合、禁煙外来を行う医療機関や禁煙治療のオンラインクリニックがあります。
禁煙外来を行う医療機関
禁煙外来では、「ニコチン依存症管理料」の算定対象※となった方は、健康保険が適用され禁煙治療を受けることができます。
※「ニコチン依存症管理料」の算定対象
- ニコチン依存症に係るスクリーニングテスト(TDS)で5点以上
- 1日の喫煙本数×喫煙年数=200以上
- 禁煙の意思が強い方
- 禁煙治療について説明を受け、治療に文書で同意した方
禁煙補助薬のニコチネルTTSやチャンピックス(現在は休止)を用いて禁煙治療を行い、適切な禁煙指導やアドバイスなど医師のサポートが充実しています。
しかし、禁煙外来の予約や継続した通院に負担がかかることや、周囲にバレたくないことから、一歩踏み出せない方も少なくありません。
禁煙治療のオンラインクリニック
通院する時間がない方や忙しい方は、オンラインクリニックでの禁煙治療を検討してみてはいかがでしょうか。
スマートフォンから予約・診察ができ、自宅にいながら相談から禁煙治療ができるので「禁煙しよう!」と思い立ったときから禁煙を始めることが可能です。
ご自身のタイミングに合わせて診察を受けられるので、忙しい方も安心ですね。
禁煙治療を行っているデジタルクリニックでは、医師との診察後、最短翌日に禁煙補助薬を自宅までお届けします。
また、ニコチネルTTSとチャンピックスの海外製ジェネリック医薬品であるバレニクリン(バレニスマート)2種類の禁煙補助薬に対応しているので、服薬治療を希望している方も選びやすいことがメリットです。
不安なことがあれば診察後もチャットで相談できるので、禁煙を継続しやすい環境を整えることができるでしょう。
デジタルクリニック
https://digital-clinic.life/lp/stopsmoking
ニコチン依存症から解放!禁煙で健康な未来へ
ニコチン依存症は、アルコールや覚せい剤よりも依存性が強く、意思の弱さや、ただ単にたばこがやめられないだけではありません。
脳内が、ニコチンに洗脳されているといっても過言ではありません。
ニコチン依存症から抜け出すには、自分自身の禁煙する気持ちとともに、医療のサポートが不可欠です。
軽いニコチン依存症であれば、薬局やドラッグストアで販売している禁煙補助薬でも禁煙に成功できるかもしれません。
しかし、喫煙習慣が長い方やニコチンの依存性が強い方はニコチン依存症の長期的な治療が必要な場合もあるため、医師の診察を受け、禁煙治療を受けることをおすすめします。
禁煙を続けるアドバイスや失敗した際の対策なども相談できるので、無理なく禁煙を続けることができるでしょう。
ニコチン依存症に悩んでいる方は、ぜひお気軽にご相談していただき、禁煙治療にチャレンジしてください。